たとえ人を殺しても、過労死であれば罪が軽くなるこの社会は狂ってる

ここがおかしい日本社会

少し前に、電通社員の過労死自殺が話題を呼んだ。

同じく過労死を引き起こした大手企業であれば、ワタミの社員が入社2カ月を経たずして自殺したことも衝撃的なニュースだっただろう。

さて、過労で死んでしまうほど過酷な労働環境がおかしいということはもはや言うまでもない公然の事実であるためわざわざそこには触れない。今回私が着目したいのは、労働環境のおかしさではなくこの国の法律のおかしさだ。

より具体的には、「たとえ人を殺しても、過労が死因であれば殺人罪に問われることがなく、ましてやその罪も著しく軽い」ということだ。

ad

苦しめて殺した方が罪が軽い。そう、過労死ならね

過労死へと追い込むことの悪辣さ

まずなにより、過労死は経営者が意図的に行わなければ起こりえない事柄である。

法律により長期の残業は規制されているし、また月に80時間以上の時間外労働からが過労死ラインであると明確に定められている。
(1日8時間勤務で月に20日出勤が基本労働時間だとすると、1日に4時間の残業をするとこのラインに到達する)

大手企業の経営者や役員、または法務部の人間がこのことを誰一人知らないというのはいくらなんでも不自然すぎるし、仮に本当に知らなくても「人殺しましたァー、でもわざとじゃないんでぇ。メンゴメンゴー」で許されるわけがない。こと犯罪に関して、無知は罪なのだ。

意図的にやらなければ起こりえないわけであるから、これはもうとうてい事故とは言えない。明確な殺人であり、故意犯だ。にも関わらず、法律では殺人罪は問われない。

また、死に至るプロセスという観点で見ても、非常に悪辣であると言えよう。なぜなら、過酷な労働を強いて、肉体的・精神的共に疲弊させて殺しているからである。

考えてみると、まだナイフで刺されて死ぬ方が苦痛は少ないはずだ。肉体的苦痛は伴うものの瞬間的なものであるし、精神的な苦痛はほぼない。少なくとも、過労自殺のように自ら命を絶つことを選ぶほどの精神的苦痛はとうていあり得ないと考えて良いだろう。

加えて過労死を引き起こす企業というのは、まともな残業時間を記入できないため、実際の労働時間よりも短く申告される傾向にある。つまり、残業した分の給料が支払われないケースがほとんどであるのだ。これは言ってみれば、「奴隷を酷使しすぎて殺した」と言ってもなんら差し支えがないだろう。払うべき金を払ってないんだし。

ふつうに考えて、ナイフで人を刺したことよりも過労で人を殺した方がよっぽど悪辣であるということがおわかりいただけただろうか。……しかしおかしなことに、この国ではナイフで人を殺した方が圧倒的に罪が重い。ましてや、事故でついうっかり人を轢いてしまったことの方が重い罪を問われてしまうのだ。

従業員が過労死した場合、会社の背負う刑事責任とは?

労基法101条によると、もしも従業員が過労死してしまった場合、労働基準監督署は会社に対して臨検や帳簿の提出を求めたり、尋問することでまず労基法違反がないかどうかを調査することができる。そしてもしも違反があれば是正勧告を行うことができる……のだが、落とし穴はここにある。

そう、この是正勧告は名前にあるとおりただの「勧告(ある行動をとるように説きすすめること。また、指揮命令の関係のない行政機関が、互いに自主性を尊重しつつ、相手の機関の任務達成について、専門的立場からの意見を提供すること。 日本国語大辞典より)」であり、

つまるところ強制力はない

一応、全く改善が見られない場合や明らかに形だけの改善であることがわかった場合にはそこからようやく刑事手続に進むことになっているが、そんなのはあってないようなもの。

なぜなら、少しの間だけ改善しておいて、ほとぼりが冷めた頃にまた元の過酷な労働環境に戻せば良いだけだからだ。

だからこそ広告代理店最大手・D社(笑)は過去にも過労死事件を引き起こして、今回また同じことをやってのけたのだ。本当に改善されていたなら、二度目は起こらないはずであろう。

また、そもそも刑事責任を問う前に是正勧告でワンクッション置く意味がわからない上に、直せば刑事責任を問われないのはもっと意味がわからない。

「やー、人殺しちゃったけど、今はもう反省したから許してね☆」で、罪に問われず許されてしまうのだ。重ねて書くが、それで一度許された上でもう一度人を殺したのが電……おっと。広告代理店最大手のD社である。

問題なのは、やはりこのような非人道的行為を行った企業や経営者に対して、適切に裁く法律がないことだろう。

人を酷使して殺してもたいしたリスクがないのだから、そりゃあ過労死という言葉が世界に輸出されるほどに悪徳企業がのさばるはずである。

逆に言えば、「俺は捕まりたくはないけど金はほしいし人も殺したい」という人は会社を経営すると良いだろう。

少なくとも日本においては、ちゃんと反省したふりさえ装っていればそれで捕まることはまずないのだから。

 

もしも十分な休みを取れていないのならば、下記記事を読んでほしい。
あなたが、壊れてしまう前に。

 

タイトルとURLをコピーしました