若いうちにいろいろな経験(多くの場合で経験とは失敗を指す)を積んでおいた方がいい、という啓蒙はおそらくどこの会社でも聞かされるようなごくごくありふれた通説である。
そしてこれを言ってる人間自体が得てして平均的なごくごくふつうのサラリーマンであるため、説得力がまるでないことにはこの際目をつぶろう。
たとえ同じ言葉でも、役員クラスが言った場合と課長や部長クラス止まりの人間が言った場合とではきっとその経験の指す中身が違うから、あまり真に受ける必要はない。
かといって役員クラスなどのエグゼクティブ層が言うところの経験なんてのも凡人が容易に積める類いのものではないから、やっぱりこっちもあんまり真に受けなくていい。というか、真に受けたところで真似できない……。
さておき問題なのは、若いうちに本気で経験を積もうと思ったら、裁量も責任も小さい雇われのサラリーマンであるよりも、個人で事業を立ち上げるなりしたほうが遙かに経験を積めるということだ。
今回は、そんなおはなし。
目次
本気で経験を積もうと思うならサラリーマンやってねえよ
責任も裁量もすべて自分で追う独立者・個人事業主
自分で一から立ち上げた事業ならば基本的にすべての裁量は自分にあるし、必然責任も自分で取らなきゃならない。
企業勤めならば確かに巨大な資本にものを言わせた数字の大きな取引ができるというスケールメリットもあるにはあるが、でかいのは見かけの数字だけ。
特に大手の場合は仕事の範囲が細かく分けられているため、大型案件を自分一人で対応するなんてことはまずありえない。それも若手ならばなおさらである。
つまるところ、「若いうちにいろんな経験をした方が良い」という言葉を本気で分解するならば、「会社辞めろよ」となる。あ、副業可能な会社は別だからね。きみは許す。
しかしながら日本の企業はほとんどが副業禁止の就業規則があるだろう。てめえのところで自分の会社に縛っておきながら、「いろんな経験を積んだ方がいい」とは如何様か。それ。矛盾してない?
原因は、「俺デキる系」勘違い上司のせい
とはいえ、実際言い手側も「You,会社辞めちゃいなよ」という意図で言ったわけではないだろう。
すべては雇われ人で積める程度の経験値で、
「ア~俺ってばいろんな経験してきたよなァ~~~。ちょっくら人生経験豊富な俺様から、俺の半分くらいしか生きてないこの若造クンにアドバイスでもしてやるかァ~~~」
などと勘違いしちゃってるのが原因である。
なので、あくまで言い手の説得力のなさが問題であるため、言葉の内容そのものが間違ってるとは言いがたい。経験はないよりも豊富であるほうが良いことには間違いないだろう。
よって言い手とは無関係に、もしもあなたが自分のために経験を積んでおきたいと思うのならば、注意点として頭に置いてほしいことがある。
それは、雇われの役員でもない一介のサラリーマンレベルの経験は大した経験にならないということだ。
なぜってそれは、ふつうのサラリーマンがふつうに得られるレベルの経験でしかないからだ。
豊富でもなければ、結果がただのどこにでもいるふつうのサラリーマンじゃあ、
「いったいどこに経験の豊富さによるベネフィットがあったの? 経験豊富なのにただのその辺にいるサラリーマンなの?」と言いたくなるだろう。先にでてきた勘違い上司、おめぇのことだよ。
けれど、今いる会社を辞める必要もない
そしてもう一点。自分で事業をやろう。
別に今勤めている会社を辞める必要はない。副業として小さいことからやり始めるのも良い。もちろん、独立してがっつりと起業してしまうのは尚良いが。
一見リスクを伴うように思うかもしれないが、よく考えてほしい。そのまま会社で与えられるだけの仕事しかやらないで、30代40代50代のオッサンになってしまったときのことを。
こんなやつらもう転職も難しいし、会社に頼って生きていくすべしかしらないから、今いる会社にしっぽ振って媚び売るしか能がないわけで。クビになったら死活問題だもんな。
これって、よくよく考えるととんでもないリスクでしょ? 会社が倒産する可能性だってあるわけだし、たとえ倒産しなくとも経営者や経営方針が変わってとんでもないブラック企業に変貌してしまうことだって余裕である。
そうなったとき、自分自身の手で稼げる能力も経験もないカスはそのままみじめな人生を送るしかない。それか再就職頑張れよな!
けど、出来ることならばそうなってしまわないように事前に手を打っておきたい。それが、自分でやる事業だ。
「副業なんてしたら働く時間増えるじゃん……。ブログの主旨と反してない? なぁ~~にが『ちょっと働く いっぱい遊ぶ』だよ」と思われるかもしれないが、意外なことにそうはならない。
と言うのも、会社以外からの収入源があれば、金銭面に精神面にとあらゆる面でゆとりが出来始めるため、たとえ会社から理不尽なことを要求されても強気で断れるようになるからだ。
また、出世することによるメリットも特に感じられなくなるため、あなたがモーレツ型社員でなければほどほどに仕事をするようになるだろう。
気楽に仕事ができるようになる分、根詰めすぎることがなくなるのだ。
それに、兼業サラリーマンには兼業サラリーマンのみの強力なメリットがある。
それは安定した「収入」と「職歴」を得ながら、なおかつ「青天井の賃金」と「自立した経験」を同時に得られるチャンスを持っていることだ。
あなたはどっちを、やりますか?
サラリーマンと兼業でやるにしても、独立して専業でやるにしても、自分の力で稼いでいけるだけのスキルと経験は最低限積んでおきたいものである。
将来、その会社でしか通用しない哀れなオッサン・お局になってしまわないために。