労働者を守るための労働法を無視して労働者を酷使すればするほど会社にとってのメリットは大きくなります。
世間体のある企業ならともかく、誰も知らないような零細であれば法令を順守した運営をしている会社などほとんどないことでしょう。
そんな違法ブラッククソ企業は許せるはずもありませんが、労働基準局に訴えても何もしてくれないことがしばしばあります。
では、どういったケースでの相談で労働基準局は動いてくれないのでしょうか。
以下に紹介しましょう。
――労働法の効力の届かない範囲や法の抜け道が、確かに存在します。
本日の記事は、いくつもの会社を経営しているPHIROS様の提供でお送りします。
労働基準局にタレコミを入れても何もしてくれないことが多い3つのケース
パワハラのケース
その代表的なものがパワハラです。
パワハラを原因として退職する場合、会社側の不徳により辞めざるを得なくなったわけですから、会社都合による退職と考えるのが当然でしょうが、明文化された解雇とは異なり、会社都合退職の取り扱いは”明確な”ガイドラインが存在していません。
一応、パワハラを理由に退職した場合には会社都合退職との明文は確かにありますが、わざわざ自らこれに沿って手続きを進める会社などないでしょう。会社は都合の悪いことは隠蔽したがるもの、特に零細ならばなおさらです。
また、会社ぐるみではなく上司一個人がパワハラを行っていた場合、経営者や他の同僚にも発覚しづらくパワハラがあった事実を証明することも難しい現状があります。
そして会社が用意する離職証明書において自己都合退職と記載されてしまえば、その後が非常にめんどうなことになります。
「そんなの離職証明書に求められる署名・捺印を拒否すればいいだけじゃん」と思うかもしれませんが、そのままでは失業給付受給が遠のくばかりですので、行き着く際は会社との交渉かハローワークへ相談をする流れとなります。
ハローワークの窓口であなたがどれだけ不当な扱いを受けたかについて主張したところで、法的に根拠のある証拠を出せなければ個人の口頭による愚痴にしかすぎませんし、また担当者さんが会社へ事実確認を入れたとしてもおそらくは否認されて話が進まず、いつになっても失業手当がもらえない状態が続くばかりでしょう。
では、最後の砦となる労働基準監督署が動くかどうかですが、残念ながら会社都合退職か否かを争う程度の問題に積極的な介入はしてくれません。同署は客観的事実に基づいて動くものです。
そもそも職場いじめやパワハラなどを規制する明確な法律が存在していません。問われたところで会社は否認しますし、“個人の受け取り方の問題”で終わってしまいがちなのが実情です。
“無視”や“仕事を回してもらえない”状況も職場いじめに他なりませんが、犯罪用件を満たしていないので刑法上においても罪を問われません。以上の結果、個人的な感情による自己都合退職であると処理されて終わりです。
退職金のケース
退職金についてもトラブルは起こりやすいといえます。退職金制度を社内に設けるかどうかは会社の自由であり、零細でも設けている会社はそれなりにあります。
しかし、労働基準法でもほぼ触れられていない項目であるため、退職金未払いを基準監督署に相談しても管轄外の問題として動いてもらえないケースが多いものです。自分で民事訴訟を起こすよう提案されるなど、労働法は個人を決して守ってはくれません。
零細では退職金の定めが就業規則に明記されているにもかかわらず、これまで誰にも払ってきていないことだってあります。会社を辞める際、規則通りに退職金を請求してみたところ払われなかったとしましょう。
これらの経緯を基準監督署に相談してみれば、“実務上の制度として運用されていなかったのだから退職金が支払われなくても仕方がない”との回答を受けます。
上記の内容は、私が以前に働いていた零細を辞める際の実体験に基づいており、労働法は皆さまを十分に守ってくれるものではないとの参考にしていただければ幸いです。
零細に限らず、上場企業でもグレーゾーン的な取り扱いが一般的処遇として横行しています。
名ばかり管理職のケース
例えば、管理職に残業代を支払わない企業は数多くあります。
管理監督者として立場や待遇が明確であるかどうかが要点となってきますが、これはあくまで社内でそのような扱いとなっているかどうかであり、実際にトラブルとならなければ会社側にマイナスは生じません。
名ばかり管理職が問題視され、大々的にメディアに取り上げられていた時期もありました。管理職としておけば、会社が担当部門の責任を押しつけながら好き勝手にこき使うことができます。
もちろん管理職手当を付与しなければなりませんが、給与体系の基本給部分を低くしておき、職能給にウェイトを置いたものとしておけば、管理職とした際にそれまでの職能給評価をリセットして、管理職手当を含めた総支給額の調整がいくらでも可能となります。
個人的には労働法が守らなければいけない状況だと思いますが、今日現在において法整備はされていません。それが実状です。
最後に
労働法が守ってくれるのは、労働基準法というネーミングに含まれているように、一定の基準範囲までと考えておくできでしょう。
会社からすれば、労働法を守らないほうがメリットが大きいのですから、ほぼ守ることなく、何か起こった場合には事後対応となっているケースも少なくありません。
いざというときに自分の身を守るには、知識で武装しておき、それらが実務上どれほど活用できるのか情報収集しておくに越したことはないでしょう。
“知らぬが損”といったものは社会に数多くありますので、自分自身が損をしない生き方を徹底してみてください。