政府はとかく有効求人倍率がこれだけ上昇し、職にありつける国民が増えている~といった主張をしたがるが、その前にまずブラック企業の根絶を優先すべきではないだろうか。
そもそもからして、法的に存在してはいけない企業の求人が増えたところで、いったい何の意味があるだろうか? 法律を守っていない企業の有効求人倍率がいくら増えたところで、残念ながら国民がただ不幸になるだけである。
もちろん、別に有効求人倍率の向上政策それ自体を否定するわけではない。だが、優先順位の付け方として、やるべきことをしっかりとやってから次の段階へ移るべきではないか、というのが今回の論旨だ。
いやむしろ、違法企業をのうのうとのさばらせたまま有効求人倍率を上げてしまえば、現状よりも悪化するだろう。
違法企業の求人が増えたところで、ただゴミが増えただけ
さて、では法律を守っていない企業の求人が増えたら、いったいどうなるだろうか?
以下を見てみよう。
今の日本の現状を書いただけのことであるが。
有効求人倍率が上がるほど、不幸な人が増える理由
有効求人倍率が上がれば上がるほど、不幸になる国民が増える。
なぜならば、
・ブラック企業に就職する人間が増えればその分だけ過労で死ぬ人間は多くなるし、
・パワハラで精神や肉体を病む人間は増えるし、
・その分の医療負担は皆の税金から出るし、
・働いた分の給料が支給されなくて、一部の経営者層だけが“不当に”儲けて格差がふくれあがるし、
・拘束時間が長く、また休暇が取れないので経済は回らないし、
・人の入れ替わりが激しくて技術が継承されないし、
・そもそも有効求人倍率が上がっても離職率が減らなきゃ意味ないし、
・海外から優秀な人材が日本の労働市場に流れてこなくなるし、
・日本でも優秀な人材の芽が摘まれるし、
・優秀な人材ほど海外に流出するようになるし、
……と、軽く考えただけでもざっとこれだけの項目が挙げられるほど日本にとって不利益になる。
まずい上に食べると健康を害する食品を並べて、「うちにはこれだけの品揃えがあるんです!」と意気揚々と自慢されても、まずはまともに食べられる物を出せとしか言いようがない。しかも法律で禁止されてる違法食材なのだから、ことさらにたちが悪い。
求職者が働き口を求めているのは、労働の正当な対価としてお金が欲しいからである。誰も好き好んで奴隷になりたくて応募しているわけではないのだ。
で、ある以上、法律も守っていないゴミみたいな有効求人倍率をどれだけ引き上げたところで、政府がただなんか仕事をした気になっているだけにしかならない。まるでごっこ遊びだ。だってそれは、国民の望んでいるものではないし、本来あってしかるべきではないものだからだ。
それはちょうどまさに、悪徳企業の仕事内容と同じだとも言えよう。見てくれの数字だけをこぎれいに着飾って、ただのゴミをさも良い物のように売りつける悪徳企業の手口となんら変わらないのではないだろうか。詐欺師と同じである。
優良でなくてもいいから、法律は守れ。
私は別に特別良い物を出せ、と言っているのではない。
最低限の法律を守った、ごく普通の物を出せと言っているのだ。
それすらできていない段階で、有効求人倍率が上昇した~だのとのたまうのは、てんでお笑い話しにしかならない。税金を使っている以上、ごっこ遊びではなくちゃんとした政策をすべきである。