――とは、クソみたいな中小企業のオフィスからよく聞こえてきそうな台詞である。しかし、こんな台詞は職務放棄も甚だしい。
なぜならば、部下に指示を与えるのが上司の役割であり、指示通り動くことが部下の役割であるからだ。
しかしこの背景には、日本型の雇用システムが原因として深く根付いている。
たとえば本来、雇用契約という仕組み上では、雇用契約書に書かれてある内容が仕事の範囲のそのすべてだ。それ以外のことはやらなくていいし、やってほしけりゃ新たに契約を締結しなければならない。
それがふつう、ごく一般の「契約」のあり方だ。
(「契約書」なのに、契約書に書かれている以外の内容も含むだなんて、そんなことがあってたまるか)
ところが日本の雇用契約システムでは、事実上そのような正しい運用がなされていない。
契約書に書かれていないこと――すなわち、契約によって指示されている以上のことを相手に求めるのが慣例的に当たり前となってしまっている。
そしてそれによって仕事の範囲がきわめて曖昧になってしまっているから、上司による「明確な指示」が必要となっているのだ。
このような現状は、使用される側としてはたまったものではない。
ただでさえ雇用契約外の仕事を不当に指示されているのに、それを完遂してやっても今度は「指示待ち人間にならずに自分で考えて動け」だ。いったいどこまで要求すれば気が済むのだろうか。
言われたことをやってくれる部下は、課された責務を充分以上に果たしてるだろう。何も悪いところはないだろう。雇用契約を結んだ範囲の仕事をやるのが本来の与えられた責務なのだから。
そして部下に適切な指示を与えるのは管理者の仕事である。
(と同時に、不当な指示をしてはならないのも管理者や使用者の負う法的な責務である)
それを部下自身にやらせるなんて、おまえがまず自分の仕事を全うすべきである。
上司がまず自分に与えられた職務を部下に丸投げするのでは、そりゃ部下もやる気が起きないだろうよ。
そのくせどうせ、もし自分で考えてチャレンジしてみて失敗したら、今度は「勝手なコトするな」だろう。どうしても自分で考えて動いてほしいなら、せめてその責任はおまえがとれ。
さて、
とはいえこのようなクソ運用がされているのは、社内の統治システムが未熟な会社である。
管理ルールや指示系統の統一がしっかりとなされている大きな会社では、このような自体はそうそう起こりえない。
なぜならば、部下に勝手に動かれると却って現場がバラバラになってしまうから。そうなってしまわないように、「自分の勝手な判断で動かず、まず上司や責任者に確認を取れ」と教育するのである。
まともに考えれば、与えられた役割を関係なく動かれてしまったら役職を定めた意味がなくなるんだよね。
ましてや個人個人がバラバラに動いていては組織だった動きができないため、複数人で協力して働くことのスケールメリットを活かせない。それだったら個人事業として独立した方がよっぽどメリットになるだろう。
どうせ自分で考えて働かなきゃならないんなら、自分がトップでしかも給料青天井の方がいいわな。
……が、そうはいってもサラリーマンと個人事業主とでは勝手が違う部分もあるため、単純比較はできない。自分で事業を始めるにあたってのハードルもあるだろう。
この手のことを言われたならば、そこはもう沈みゆく舟だ。将来のことを考えるならば、早めに抜け出した方が良いだろう。
だって、その会社には統治能力がない。上司にはマネジメント能力がない。しょせんはその程度の会社である。
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